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TOPページ > ハービー・山口の「雲の上はいつも青空」 > 第65話 『近未来のこころ模様』

第65話 『近未来のこころ模様』

昨年の暮れ、webのデザインを勉強している専門学校生加藤さんから、「ハービー先生の写真を一枚貸して頂きたい」という連絡を頂いた。
彼女は19歳、高校を卒業して今通っている専門学校に入った。
僕が彼女と初めてあったのは、2程前のこと。彼女が通っていた埼玉にある高校に僕が特別講義の講師として招かれた時だった。

そのご縁で彼女から連絡を頂いたのだが、学校の授業の一つに、生命保険会社のホームページをデザインして、実際の保険会社にプレゼンするというのがあって、僕の写真を一枚使いたいということだった。
僕の家の近くの喫茶店で会い、数冊の写真集を見せ、一時間を過ごした。
彼女が是非使ってみたいと選んだ2枚の候補写真があった。2枚とも、写真集「1970年 二十歳の憧憬」からのカットだった。
「生命保険会社のホームページということで、お客さんは50代とか60代の方々なんです。だから、この1970年代に撮られた写真に懐かしさを感じてもらえるんじゃないかと思うんです。」
彼女が一番最初に選んだのは、列車内で撮った少女のアップ。濁りの無い可憐な瞳が初々しい。
そして、次に選んだのは、木造校舎の前で、ジャイアンツのロゴのついた野球帽をかぶっている小学生の男の子が、舟の模型を持っている写真だった。

僕は、その2枚の写真を撮った状況を説明し出した。
「この女の子なんだけどね、新幹線が開通してから6年後、まだまだ新幹線に乗るのは高嶺の花で、2〜3時間の近場に行くんだったら、普通列車に乗ったんだよ。この女の子は近くの席にいた乗客で、可愛かったから撮らせてもらったんだ。今では新幹線に乗り合わせても、他人同士喋らないでしょ!たいていの人が、ヘッドフォンして音楽を聴いているか、眠っているかで。この当時はね、近くに乗り合わせた乗客同士が、20〜30分もすると、どちらへ行くんですか、とか、夏休みのご旅行ですか、とか、次第に会話が生まれたんだよ。この娘可愛かったから、フィルム一本使っちゃってさ、撮られるのを凄く喜んでいるよね。」それを聞いた加藤さんは不思議そうな顔をした。
「でも、この娘、ハービーさんと初対面なんですよね。なんでこんな自分の性格までもが出ちゃってる表情を出せるんだろう? 今の私だったら、こんな表情を初対面の人に絶対見せないだろうし、いくら、言葉巧みに話しかけられても、言葉が上手ければなおさら、このカメラマンの人って私に本当は何を求めているんだろうって勘ぐっちゃいますね、、。初対面の人に対する意識が今と全く違いますよね。
あー でも、この前、学校見学に来た高校生たちをパンフレットに載せる目的で撮ったんですよ。高校生たち、始めは表情固かったんですけど、好きなアニメとかゲームの話をするうちに、徐々に笑顔になってきて、最後に良い写真を撮れたんですけど、でもその場合は、撮影の目的がちゃんと分かっていたから出来たことなんですよ、、。」
「普通列車はのんびりしててさ、横浜とか小田原に着くと駅弁を売っていて、横浜ならシウマイ弁当、小田原はかまぼこが名物で、窓を開けて、お弁当屋さんから買うわけよ。」
「エッ!? 窓から買うんですか??」
「そうだよ、列車がすこし動き出してからでも、お弁当屋さんは、小走りで早業でおつりをちゃんと渡してくれるんだ。」
加藤さんの常識が全てひっくり返された様子だった。
「なんていったって、君は19歳だからね、当時のことは理解出来ないでしょう!人の意識も習慣も今とは違うんだな。」

加藤さんは2枚目に選んだ木造校舎の写真を取り上げた。
「そもそも、校舎が木造ってのが信じられないですよね、校舎は鉄筋と決まっていると思っていたんで、、。それと、外から見えるところに4年2組って書いてあるじゃないですか、これってそとの人に、この生徒が4年2組ってことが分かっちゃいますよね。今じゃ当然外部には見せない情報ですよ。先月、あたしの卒業した小学校に行ったんですけど、受付で書類に名前とか訪問の理由とか書かなくてはいけなくて、自分の母校なのに、なんか寂しかったですね。」
「男の子の野球帽はみんなジャイアンツのマークが付いているでしょ。この時代、野球と言えばジャイアンツしか全国的に人気はなかったの。ちょうど王さん、長嶋さんに時代、ジャイアンツが一番強かったしね、みんなジャイアンツに憧れてた。」

加藤さんは、この説明でも不思議そうな顔付きだった。新人類という言葉があるが、この写真には現在と40年間もの開きがあるんだと、加藤さんの驚く顔を見ながら時の重さを実感した。
「今は、人それぞれ違う価値観を持っているでしょ、だから国民全体で熱狂するものっていうのが減っているよね。40年前っていうと、当然携帯電話もパソコンもないんだけど、別にそれが当たり前だったし、ネット犯罪なんていうのも無かったわけで、人は今より素朴で、人を信じてたっていうか、この写真が悪用されるっていうことは、撮られている人間は考えなかったよね。だから、列車で会った少女も写真を撮られる事を嬉しがっているでしょ?」
その言葉に加藤さんが続けた。
「この前、友達と二人で、ソフトバンクの孫さんの、30年後には社会はどうなっているかって言うお話を聞いていたんですよ。そしたら孫さんは、30年後には、労働はみなロボットがすることになるから、人間はもう働かなくてもいい時代になるだろうって仰ったんです。文明や技術が加速度的に発達するって、、。」
「へー、そうなんだ。多分医療現場なんかは、高度なロボットは必要かもね。例えば老人の介護、これみんなロボットがやってくれる。30年後のロボットの表面は、人肌と同じ温度と柔らかさがあって、おばあちゃんの介護には、ヨン様似のロボット、おじいちゃん用には、AKB48の誰かに似たロボット。」
「あとね、ハービーさん、人間は勉強もしなくてよくなって、人口頭脳をひとりひとりが持っていれば、人工頭脳に聞けばなんでも最良の答えを出してくれるっていう話も聞いたことがあるんですけど、友達と二人で、これってヤバいんじゃないって話していたんですよ。ITとかデジタルの加速度的な進歩に果たして人間が追いついていけるだろうかって。この前、漫画の中の女性と結婚した男性がいて、ちゃんと結婚式を挙げたそうなんですよ。信じられませんよ。もう人間が要らなくなっちゃうんじゃないかって。」
「そうだね、自分好みの顔や身長、3サイズを指定してロボットを作ってもらって、そのロボットと結婚したら、絶対裏切りはなくて、自分に常に服従してくれて、年もとらないし、子供が欲しければクローン人間を作る。僕だったらどの女優さんの顔がいいかな。」
「適当なところで、発明をストップさせた方が良いんじゃないですか?または発明や進化の方向をちゃんと見極めておかないと、、。
でないと人間はどうなっちゃうんだろう。」
「努力や、愛もこころも、人間の最も大切なものはもはや要らない。そうしたら人間は滅びるね。機械の発展でより便利になるだろうけど、我々は人間として持っていた本能の何かを失うからね。」
「人口頭脳が、各国の大統領とか首相の地位になって権力を持ったら、あたしたち人間は機械に支配される。そんなの嫌です、あたし!」

この言葉を聞いて、彼女は若いけれど、近未来の人間性の喪失に危惧を抱いている事が分かって、僕はほっとした。
機械や文明の発達はある程度予想出来るのだろうが、それよって、人のこころがどの様に変わっていくのかまでは予想がつかない。
陳腐と言われようが、愛とか慈しみ、優しさ、理性、道徳を失ってはならないのだ。
加藤さんはバブルを経験していない世代だ。就職氷河期の中で生きている。だから、日本の国の将来には夢とか希望は持ていないという。
せめて、webのデザインや写真を通して新しい世界を開き、広く友達の輪を作ったり、人に楽しみを与えたり、さらには人々の人生を良い方向に変えて行く微力になれれば、と願っているそうだ。
地球をみれば、異常気象、そして日本は人口が減少しているが世界的には人口は増加の一方だ。
自由主義、個人主義、利己主義はほどほどにして、地球全体を守り 、人類全体の調和を考えるこころが各国の為政者にはもちろん、世界の人々の中にもっと芽生えて欲しいものである。