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TOPページ > ハービー・山口の「雲の上はいつも青空」 >第84話 『豊川稲荷的な写真』


第84話 『豊川稲荷的な写真』

先日ある写真雑誌の誌上コンテストの審査をした。季刊誌であるために3ヶ月ごとに応募作品が集計され、その都度2千数百枚を超す写真が審査対象となる。編集部の一角を占領しての審査は、午前中から始め、終了するのは夕方に差しかかる頃だ。責任重大な役割である。一時間ごとに小休止をとり、お茶を飲んだり手足を伸ばす運動をしたり、編集者と雑談を交わす。
先日の審査に立ち会ってくれたのは若い女性の編集者Yさんだった。
何かのきっかけで話題がYさんのご主人の話になった。Yさんのご主人は元プロのミュージシャンで、大手の事務所に所属していたそうだ。だが売れるところまでは届かず、グループは解散し事務所からも離れ、今はテレビの制作会社で働いているということだった。しかし、ミュージシャンの経験があるだけに音楽にはとても詳しく、番組を作る時にはこの経験が非常に役立っているということだった。

10年程前、ご主人が事務所を離れる時マネージャーさんが言ったそうだ。「ハービー・山口さんにアー写(アーティスト写真)とか撮ってもらうと、バンドが売れるっていう説があるんだけど、ついに撮影の機会は無かったなー、、。」
これと似た話をあるプロダクションの社長から直接言われたことがあった。20年近く前のことだったろうか。「アーティストのAに関しては、我々はここまでプロモーションしたからな、あとはハービー頼みだな!君には豊川稲荷のようなところがあるから、、!」
これを言われた時、僕は意味を理解出来ず、「は〜、そうですか?」と答えただけだったが、後で調べると豊川稲荷は芸能の神様ということだった。

そうやって見るといくつかの好例がすぐに思いついた。後にビックになったある方がスカウトされた直後に制服のままで撮ったとか、またある方はデビューが決まって間もない頃、高校の近くで撮影とインタビューをした、、とかだ。
デビュー、移籍、または何かの大きなプロジェクトのタイミングで僕が撮影した例を挙げてみると、その他にいくつもの思い出がある。
ビクターから東芝EMIに移籍した時にビジュアルを担当し、ベルリンでのレコーディングにも同行したBOOWY。
無名だった槙原敬之さんの「どんな時も」のPV用スティールと動画撮影。
The Boomのデビューアルバム「A Peacetime Boom」のジャケ写。
また、山まさよしさんが山口県から上京後、始めてのプロカメラマンによるアー写やデビューシングルの撮影等だ。
初の東京ドーム用のコンサートパンフの撮影とかも入れるとさらに名前が浮かんだ。

もちろん僕の写真の力は微々たるものであって、彼らの才能や努力、そしてスタッフの情熱がブレイクの全てではあるが、なるほどかなりの確率ではないか。面白い統計を取る方がいるもんだと感心した。

ごく最近の例ではアメリカのミュージシャンとのコラボ用に新しいアー写が必要とのことで、2011年7月に撮影させて頂いた由紀さおりさんである。
撮影の前日、僕は目黒の大きな会館で写真家の笹本恒子さんをゲストにお呼びし、トークショーを開いていた。
日本人初の女性報道写真家でいらっしゃる笹本さんは、その時点で96歳。信じられない笹本さんの若さはトークショーにいらしたお客さんを大いに驚かせた。
その終盤、参加者の方から質問を頂くと、何人かの質問の後、ひときわ声の通りの良い女性が質問をした。そのはっきりとした声で、それまでの会場の空気が目が覚めた様に一変した。
「お二人にお伺いしたいのですが、これからどんなものをお撮りになりたいですか?」
「明日、ハービーさんに写真を撮って頂く由紀さおりです。是非ともお二人のトークをお聞きしたくてお伺いしました!」と続いた。
会場のお客さんは驚いて後ろを振り返りその声の通りの良さに納得した。トークショーが終わった時、由紀さんを壇上にお呼びすると快く舞台に上がって下さった。
笹本さんも嬉しそうに、「今までお会いしませんでしたわね!!」と由紀さんに思いっきりの笑顔を浮かべられた。
多くの方々がステージ前に集まり、我々3人にカメラを向けた。
この時点で、由紀さおりさんが数ヶ月後に世界デビューを果たすとは、会場の誰もが想像していなかった。
もちろん、由紀さんの場合もビジュアル班の力は微々たるものでしかない。しかし、ビジュアル班の仕事が被写体の方々に少しでもポジティブなものを残せたら、それは嬉しいことだ。

僕は自分のトークショーで、良いポートレイトを撮る時の心構えについて偉そうなことを言っている。
〜蠎蠅女性なら、シャッターを切る時、一瞬の恋をすること。
∩蠎蠅男性なら、自分に出来ないことをしている人として憧れを持つこと。
そして、最近新たにを付け加えることにしている。
とは、シャッターを切る時、ファインダーの中に捉えた方々の幸せをそっと願うことである。

そうした撮り手の祈りにも似た心が相手に伝わった時、カメラには魂が宿り良いポートレイトが撮れるのではないだろうか。
写真家は相手を観察しているつもりでいるが、実は相手からじっと観察されているものだ。
アーティストの撮影でも、街のスナップ撮影でも、お互いが尊重し合えるフォトセッションを常に目指したい。

その先に、マジックとか不思議と言っても過言ではない、お互いの人生の好転が待っているかも知れないのだ。