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TOPページ > ハービー・山口の「雲の上はいつも青空」 >第85話 『カメラが持つもう一つの力』

【写真展開催のお知らせ】
『HIKARICAL SCAPE 雲の上はいつも青空』
2013年2月2日(土)〜3月31日(日)
場所:滋賀県立近代美術館

『あそこに見えるのが天草の空』
2013年3月15日(金)〜3月21日(木)
3月16日トークショー開催(出演:小山薫 堂×松任谷正隆×ハービー・山口)
場所:富士フォトサロン(ミッドタウン内)

『大河ドラマ 「八重の桜」 写真展』
2013年3月19日(火)〜4月14日(日)
場所:NHKスタジオパーク スタジオギャラリー


第85話 『カメラが持つもう一つの力』

今日はどのカメラを胸に下げていこうか?外出時にいつもカメラ庫のドアを開けてしばし悩むのが日常だ。
一番気に入るカメラのボディーとレンズのセットがすぐに直感出来ればしめたもので、そんな日はなんだか良い写真が撮れそうな気がする。
M6に7枚玉の35ミリ、MPアンスラサイトに8枚玉35ミリ、M3にズミクロン50ミリ、このあたりの中から選ぶことになる。

しかし、昨年暮れから新たな組み合わせが加わった。それはM3のブラックペイントで、かなり前に知り合いから譲って頂いたものである。
入手直後に修理の方に整備をお願いしたら見積もりがかなり高く、譲り受けたまま整備をすることなく何年間も保管したままだった。
そのボディーがカメラ庫の奥にもの言わずじっと佇んでいるのを昨年の暮れに見つけ、これは使ってあげないといけないと思った。
整備には8万円程かかるという。前のオーナーも使わずにしまっておいたのだろう、オイルが固まり、巻き上げや各作動部の感触はごりごりとしていた。さらにシャッター幕も交換しなければならないということだった。 整備を依頼してから一週間程で作業は完了し、私の手元にこのボディーは戻ってきた。いつもそうだが整備を終えると、どのボディーも柔らかな操作感や静かなシャッター音が甦り驚くばかりだ。このM3場合もいつもの例に違わず、全く別のボディーに変身していて感動した。

このM3が、今年から新たな組み合わせに加わったのである。
折角整備したのだから使わなければという意識も手伝い、最近のもっぱらの主力機はこのM3ブラックペイントとなった。
年も開け1月4日のことだった。頂戴した年賀状のお返事を投函しに表に出た。M3にズミクロン50ミリのブラッククロームを付けてである。
近所のコンビニで50円の切手を50枚買って歩道のベンチに腰をかけ、良く晴れた陽射しを浴びながら切手を一枚づつ貼っていた。
歩道を挟んだバス停にはバス待ち用のベンチがあった。5分程すると幼稚園の通うくらいの小さな男の子と長髪のお父さんがベンチに腰をかけた。そして子供は今しがた買ったのだろうハンバーガーを食べ始めた。お父さんは長髪で、一見するとどこかのロックバンドのドラマーのような風体であったが、実に優しく我が子に接してハンバーガーを与えているのだった。

私は彼らが自分の被写体にふさわしいと直ちに確信した。切手を貼る手もおろそかに、私の関心の100%はこの親子に向かった。
親子の世界の中にスーッと入って行けるタイミングを探すのである。
一瞬子供が僕の存在に気が付き僕を見た。すかさず「お父さんの買ってくれたハンバーガー、美味しい?!」と声を発した。
すると子供は「美味しい!」と言わんばかりにうなずき、お父さんはにっこりと満足そうに笑って私を見た。
これで状況は整った。後は何食わぬ顔つきで、「一枚写真撮っても良いですか?」とさりげなくお断りすれば良い。

それから数日後、私は自分のマンションの1階にあるカフェで、雑誌の編集長と打ち合わせをしていた。
隣のテーブルには、凄い美人のママが小さい女の子を膝の上に乗せ、友達とお茶を飲んでいた。
この場合もこのママが絶好な被写体だった。私は打ち合わせ中であったがそれはお構いなしに、胸にぶらさげたM3ブラックペイントを両手に包みこみながら、いつもの様にタイミングを計り私は撮影に臨んだのである。
この一部始終を見ていたのが目の前にいた編集長だった。
「あー!そうやって撮っているんですか!撮影の現場を見ることが出来てラッキーだったな!!」としごく満足そうだった。
バス停の親子もカフェのママも、プリントの仕上がりが楽しみで、シャッターを切っている時の高揚感は最高に自分を幸せにしてくれた。

こうした、絶好の被写体を前にした場合、カメラから発せられるオーラの力というのがかなりあって、「このカメラなんだから、良い写真を撮れよ、みっともないことをするなよ!」とカメラに言われている気がするのである。なにしろ、あのブレッソンが、あのジャンルー・シーフが好んで使ったM3ブラックペイントなのだから。

話は変わって2年程前のことだった。どことなく体調が思わしくなく、近くの内科と診療内科を掲げているドクターに会いに行った。
「私も60歳を越えまして、何となく不定愁訴というか体力減退というか、、、。」
そんな私にドクターは運動不足を指摘した後、処方して下さったのが、ツムラの41番という漢方薬だった。
「疲れやすい人の食欲不振、病後の体力の低下、胃弱、貧血、風邪などを改善する働きがあります。」と説明書に書かれてあった。
ところが1ヶ月、2ヶ月経っても改善は見られなかった。
「もう少し飲み続けて見て下さい」とドクターは薦めた。
それが昨年の中頃からだろうか。多少の効き目が表れてきたのか、夏の暑さには昨年より持ちこたえ、気分や体力がややましな気がしてきた。

先日、ドクターに改善したことを報告すると、「あー良かったですね!でもハービーさんの場合は、カメラを持って、ファインダーの中に素敵なものを見つけてシャッターを切ることが一番身体に良いんですよ。そしてその写真を見た人が少しでも幸せになれるのなら、それ以上のことはないじゃないですか!」
なにか、私の根底を見透かされた様で、「うーん、そういうことなのか、、。」とうなずいた。

さて2月23日、春を予感させる様な爽やかに晴れ上がった日であったが、昨日から悪寒があり頭がぼーっとしていた。しかし、夕方思い切って近くのスーパーに買い物に行った。いつになくレジの前は長蛇の列が何本も伸びていた。会計にかなり時間がかかりそうで意気消沈してしまった。
私の後ろに並んでいたご夫婦と、「こんなに混んでいるのって見たことありませんね!」という会話が自然に生まれた。
タイミングを見計らってご夫婦に向かってカメラを構えた。
若い奥さんが、「あらっ素敵なカメラ、ライカね」と言った。
「へー!ライカをご存知ですか!」
「ええ、名前だけ」
「あの私、写真家なんです。」
「そうなんですか、なんか雰囲気が違うなと思っていました」
「ハービー・山口と申します」
「おー、お名前知ってますよ!私達テレビの制作会社に務めているんです。近所にお住まいならまたお会いするかも知れませんね!」
そんな初対面の方と会話を交わしながら数回のシャッターを切らせて頂き、買い物袋を下げて帰宅した。
すると昨日からの寒気はどこかに吹き飛んで行ってしまっていた。

ドクターの仰った通りである。
カメラと私と被写体と、この3つの接点が上手く結びつけば、これ以上の良薬はないのだなと実感した。