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TOPページ > ハービー・山口の「雲の上はいつも青空」 >第86話 『気温23度、湿度50%のパワースポット』

第86話 『気温23度、湿度50%のパワースポット』

滋賀県立近代美術館で開催されていた個展が無事終了した。2013年2月2日にスタートとした企画展であったが、終わってみればあっという間の2ヶ月間で、惜しみつつ3月31の最終日を迎えた。

小さなギャラリーでアットホームな雰囲気を作ったり、少ない点数を集中的に見せるという方法も良いが、大きな美術館の何部屋かを使い150点以上の写真を展示する大型展は格別だ。
そして大型展にはいつもとは違う覚悟とか入れ込みが必要だ。何故ならこれだけの点数があると、自分の写真家としての歴史をひも解くこととなり、おのずと自分は写真と共にどう生きてきたかを、良きも悪しきも思い知らされる事になるからだ。
この写真展も然りで、私の原点となる大学時代に撮影した「1970年 二十歳の憧憬」から始まり、代官山17番地、そして最新の東日本大震災のポートレイト、さらにロンドン、ベルリンの壁が崩壊した時の東欧を展示した。
1970年から2013年まで、年齢にして19歳から63歳までの実に44年間、常に希望を持ちたいと願って撮り続けた自分の写真人生の軌跡そのものだ。
それぞれの年齢、それぞれの時代に私の前を通り過ぎ、消えて行った物ごと、人物にどんな眼差しを向けていたのかが一目瞭然になるのである。

タイトルは「HIKARICAL SCAPE」 という光や希望ある光景を意味した造語を使い 、「雲の上はいつも青空」の副題を付けた。

こうした大型展は、2010年に川崎市市民ミュージアムでやはり2ヶ月間の会期で開催したことがある。写真家として、一生に何度も出来ないイベントである。
川崎は自宅から車で40分位の距離だったので空き時間が出来ると会場に足を運んだのだが、滋賀県までは新幹線に乗ってさらに京都から琵琶湖線に乗り換えと、結局3時間以上はかかるのでそう簡単には行かず歯がゆい思いをした。
会場に行けば行くだけのことはあって、色々な方々にお会い出来するのは最高に楽しい。お客さまから思わぬ言葉を頂戴出来るし、お客様も思わず作者に会えたことをとても喜んで下さるのからだ。

滋賀県は遠かったのであるが、開催中に様々なイベントが組まれていて合計10回の訪問を果たせた。
飾り付け、報道関係の方を招いての記者会見、会場を一周しながら作品解説をするギャラリートーク、別会場でのトークショー、シンガーソングライターの入日茜さんとのコラボコンサート、大人のための写真教室、親子のための写真教室と様々なイベントである。
特に大人のための写真教室は15名の限定であったが380名近くの方からの応募を頂き、またトークショーなどもその度100名、200名のご参加を頂いた。

こうしたイベントを開催しながら会期は過ぎて行ったのであるが、日々が過ぎるにつれ、写真展に関するいくつもの反応がtwitterや会場に設置した感想文ノートから知る事が出来た。
「今からハービーさんの写真展に行ってこよう。忘れてしまった何かを探しに、、」
「今日は主人と共に参りました80歳と83歳の夫婦です。高度成長時代を生きてきたことを思い出し、感動で涙する時もありました。現在の何不自由ない時代にありながら、何か満たされなくて世の中にがっかりします。でも、また何かしっかり生きようと心が変わりました。ありがとうございました。」
「FM放送で聞いたハービーさんの、70年代はみんなもっと世の中を良くしていこうという気持ちがあった。という一言で今写真展会場にいます。私も写真学生としてたくさんの写真を撮っていたのですが、街頭や駅で出会う人に一言かけてシャッターを切らせてもらうことが普通に出来たし、人々は優しく微笑んでくれたものでした。これから先の私の生き方を、考えさせられた、ではなく大方決めましたよ、と、報告したくなるような写真展でした」
「私がオギャーっと泣いた頃の写真。知らない景色の筈なのになぜか懐かしい写真たち。3、11シリーズには涙が出そうに、一日一日を大切に生きないと、」
「陽気に誘われて来ただけなんですけど、来て良かったです。特に東北の方々の笑顔を見ていると涙があふれてきて、途中の休憩所でしばらく泣いていました。」
「私は24歳、23歳でロンドンに旅立ったハービーさん、今、すごく突き動かされています。今からでも遅くないかなー」
「布袋寅泰のギタリズムを通してハービーさんを知りました。”A Day In Autumn"の詞の世界が大好きでしたが、写真の世界も同様で大変感動しました。」

賞賛の言葉ばかりではなく次の様なご指摘もあった。
「ハービーさんは、我々が失ってしまったもの、、と書いてありますが、その言葉には違和感を感じます。それは東京でのことで、私の住んでいる田舎では、人々はちゃんと助け合いながら生きていると思います。是非、色々な日本を撮って下さい」
「コメントが語り過ぎていて自分の想像力を働かすことなく写真を見ていた」
「1970年、 二十歳の憧憬」シリーズの7枚が作者の才能、感性の全てである。後の作品はその燃えかすばかり。3、11シリーズにしたって被写体負けして緊張感が無い。もう一度庶民の素顔に迫る覚醒を期待する。」

こんなブログもあった。
 「いつも聞いてるFM滋賀のパーソナリティーがとても感動した!と繰り返し話していました。「映画でもなく、文章でもなく、写真を見て泣いたのは初めてです」。その言葉、すごく心を動かしました。
実際に写真を見て・・・本当に涙が出てきた。写真って、カメラという道具を通して,瞬きする程の瞬間を切り取るもの。その瞬間、その瞬間をとらえるのは写真家の感性であり、視点であり、その世界観。
写真はほとんどが白黒だったんですが、白黒に感じられないんです。一枚一枚の写真からは、確実に豊かな色彩を感じさせてくれました。
感じさせる色彩は撮った人の心だと思う。この方はどれだけ豊かな感性と、優しい心をもってシャターを切ってきたんだろう。切り取られた時間は、過ぎ去った過去なのに写真という命が与えられ展示室の中で、確実にその存在を、、、写っている人の心を、訴えかけてきました。その根底に感じられるのは切なくなるほどの「優しさ・希望」。辛い気持ちも、苦しい心も苦しみも、涙も、きっと負の体験も感情も、たくさんたくさん感じ、苦しみ、飲み込んできて、その先に見える希望とやさしさは、どこまでも深く優しく暖かく感じました。良い時間を過ごすことができました。
昨日、ちょっとイライラすることが二つもあり・・・久しぶりに黒い感情が胸の中を渦巻いていた私、ああ〜・・・この状態アカンなあってわかっていてもぬぐえない負の感情。そんなささくれだった私の心をふわ〜っと優しい風がすぎるように、いつしか負の感情が消え去っていました。
美術館をあとにして、一番初に見るのは広い空!近代美術館にくると、なぜか必ず空を見上げている気がします。ここの空は、広いなあって思う。すっくと伸びた冬の木々がたまらなくいとおしくねる空。常緑樹と緑と共存している空。雲が流れて、同じ空は一つないってことを改めて感じさせる空。
今日、見た写真を回想するのに最高の空!! 今回の企画展、おすすめですわあ〜〜〜〜!!」

3月14日だった。このFM滋賀の番組に出演する機会を得た。「写真を見て初めて泣いた」とその感動を何度もリスナーに訴えて下さった木谷美帆さんの「HAPPY」という朝の生放送の帯番組だ。
実は出演日の前日,僕はすでに滋賀県にいて、車のラジオでこの「HAPPY」を聞いていた。番組のエンディングで木谷さんはこう仰っていた。
「実は明日、明日ですね、この番組にあのハービー・山口さんが来て下さるんですよ。どういう経緯で来て頂けることになったのは分かりませんけど、わー!どうしましょ? 一体なにを聞いたら良いんだろう、まさかご本人は聞いていないと思いますけど、皆さん教えて下さい。」
木谷さんの中のかなりの動揺が、その喋り方から伝わってきた。

翌朝、宿泊していた大津プリンスホテルから徒歩で数分のFM滋賀へ伺った。放送すでに始っていて、ゲストコーナーの時間が来ると僕はスタジオの中へ案内された。放送中の木谷さんははきはきとした元気一杯の若い女性で、目鼻立ちの整ったお顔には、どこか西洋の血が混じっている様なエキゾティックな雰囲気を漂わせていた。木谷さんは「今日お迎えしましたのはハービー・山口さんです。」と紹介して一言二言の会話を交わすと、みるみる彼女の大きな瞳に涙が溢れて、その後はずっと泣いていたのである。
「ハービーさん、一人で喋っていてくれますか!わたしもうメール読めませんから、ハービーさんが読んで下さい!」
彼女は本当に一本気で純粋な方なのだ。
マイクを任された僕は、つい昨日訪れた比叡山のことに触れ、最澄が1200年前に記したとされる、「一隅を照らす」という言葉について、木谷さんからもらい泣きしそうになるのをどうにかこらえて話した。
「一隅を照らす」とは人々がそれぞれの持ち味を生かして、自分自信の利益のためでなく、社会全体のことや広く人々の役に立つように生きて行く。すると一人一人が輝き、社会も明るくなるという意味だ。このコンセプトが現代にさらに必要とされているということは、1200年間人間はこの言葉の意味を科せられているということになる。
木谷さんはゲストコーナーの最後に涙を拭き拭き気を取り直し「ハービーさん、もっともっと写真を撮って私達に見せて下さいね!!」と念を押す様にコーナーを締めくくった。その言葉に僕は写真家としての想いを新たにした。

写真展でこうした人々との交流が新たに生まれ、人々が何らかの元気を見つけてくれたら写真家として最高に嬉しいことだ。
実はこのエッセイの連載、月一回の更新の筈が、日々の多忙さに翻弄され随分の時間に渡り放置してしまっていた。
今日は5月17日、朝の空気はとても爽やかで生きている幸せを感じた。
午前中にtwitterで次の様なことを書いた。
「今日の天気は湿度は低く、気温は23℃あたりで、暑くも寒くもなく,日本では一年を通してそう何日もない心地良い日だ。人間の五感に与える影響は抜群で、気持ちがとてもポジティブになる。今日一日頑張るぞ!と。今日の天気の様な写真があるとすれば僕はそんな写真を撮りたい。」

滋賀県での個展を通し、今日の天気を通し、自分の写真のあり方を確認したのである。
つまり、多くの人が個展を見てとてもポジティブな心持ちになって下さった。
ということは、私の写真展は気温23度、湿度50%を保ち、かつ、人々の心を浄化し生きるエネルギーを喚起する、一種のパワースポットを作ればよいのではないだろうか。そんなことが本当に出来たら、写真家として本望なんだけれど、、。